タイムス住宅新聞 2013.7.12 家作りの前に、第3回

タイムス住宅新聞の連載も最終回、

今回のお題は「建築家の役割」です。

3回だけでしたが、生まれて初めての連載でした。

以下、転載します。

「建築家の役割」

私が、独立するきっかけになったのは、南城市・玉城の住宅設計でした。

100坪程の敷地は傾斜地で、半分以上を占めていたのは、

沖縄南部特有の石灰岩の塊と大きなガジュマルでした。

それらの存在感は、京都からきた私を圧倒するには十分すぎました。

家が建てられそうな場所はほとんどなかったので、

敷地の有効活用を訴え、岩もガジュマルも剥がして、

真っ平らに造成することもできました。

しかし、私も建主も「この2つがあるからこそ、この土地なのだ。」

ということは揺るぎませんでした。

ですから、家そのものをどうするか?ではなく、

岩とガジュマルという場所の性格と建築が、どのような関わり方をもつかが

デザインの主題になりました。

頭でっかちにならないように、できるだけ敷地に入り、

耳を澄ませながら、設計を進めました。

時には、ガジュマルの木の上で打ちあわせをしました。

やがて、「建築そのものが、土地の言葉を人々に伝えるためのフィルターなのだ。」

と考えに至りました。

「デザインとは建築家自身の発想だ。」と思っていた私は、

このプロジェクトを通じて、土地の力に寄り添うようにして建つことの

居心地のよさと危うさを知り、

さらに言えば、

土地に祝福されることの喜びを垣間みたのでした。

土地の言葉とは、その地形、植生、太陽や風の向きなど

自然が与えてくれる要素だけでなく、

隣近所、町並みや地域といった要素まで含めることができることがわかってきました。

暮らしとは人々と土地の関わりのことを言い、

風景とは人々と土地の時間の積み重ねのことを言うのでしょう。

それに気づかぬまま、「しっかりしなさい。」と

自分たちの生活をつきつけられても、

ぴりぴりと疲労するばかりです。

建築とは、人々と土地の関わり方の表現であり、

建築家の役割とは土地の言葉にただひたすら耳を傾け、

その根本に眼差しをむけ、

人々と土地のおおらかな関係を探し出すことです。